中央に立つアルメは、画面右側のミュージシャンたちの伴奏で、非常に官能的な踊りを画面左側の兵士たちに披露している。ミュージシャンが演奏しているのは、粘土で作った太鼓や二弦の弦楽器、ダブルリードの管楽器だ。兵士たちはバシ・バズーク、つまりオスマン帝国の傭兵であり、独特な身なりで不品行と言われていた。そういった意味で、この作品は、粗野な男性と官能的な女性、という印象を与えている。また、カイロの風景が垣間見える左側の戸口が兵士たちによって塞がれていることや、壁に掛けられた武器などから、アルメが抑圧されていることも窺える。彼女が悲痛な表情なのは、そのせいかもしれない。19世紀を通して、西欧の人々は、オリエント(東方)と総称した中東やアジアの国々に魅了されていた。そこに異国情緒と原始的な雰囲気を感じていたのだ。したがって、ジェロームの描く、緻密で滑らかな筆致の東方の情景は、まさに彼らが思い描いた東方であり、民俗学の報告書のような価値があった。1864年のパリのサロンにこの作品が出品されると、なかには官能的すぎる、不道徳すぎる、などと非難する人々もおり、多いに物議を醸すことになった。しかし、それまでに築かれていたジェロームの名声は揺るぐことなく、その後もフランス学士院に選出されるなど、芸術アカデミーの大御所への道を歩んでいく。アルメとはアラビア語で「学識のある女性」を意味する言葉であり、詩と音楽の制作や、演奏家としての訓練を受けた、ハーレムの中の特権階級の女性に由来している。男性には彼女たちを見ることが許されていなかった。一方、ガワジーと呼ばれる別の踊り子は、女性と男性の前で歌や踊りを披露した。1850年頃までにアルメはどちらの踊り子も意味するようになり、言外に娼婦をほのめかすようにもなった。こちらで、ぜひ本作品の感想やエピソードを教えてください。作品に関する質問もお気軽にどうぞ。19世紀フランスの画家ジェロームは、1854年以降たびたび訪れたトルコやエジプトなど異文化圏を主題とする風俗画を描くようになる。ここに描かれているのは、アルメと呼ばれる女性ダンサーが、オスマン帝国の傭兵に踊りを披露している場面である。 ジェロームとは? ジャン・レオン・ジェローム(1824-1904)はフランス芸術アカデミーの大御所でしたが今は半ば忘れられた画家。 トルコなど東方を舞台とする歴史画を多く描き、登場する女性ヌードの過剰なまでのエロティック度で知られています。
ピグマリオン効果とは、教師や親の期待度が高ければ子供もそれに応えるおいうもの。容姿の良い子に勉強ができる子が多いというのもこの影響かもしれません。後ろの棚に置かれているのは当時副葬品と見なされていた人形。わざわざそんなものが置いてあるのは、ジェロームが乙女を死者と見なしているからです。売春婦と化した女たちを目の当たりにし、女嫌いになってしまったのがピグマリオン。生身の女には幻滅していた彼ですが、芸術家でもあった彼は彫像なら心配なしということで完璧な美女像を作り上げ、彼女と生活を始めます。狂喜したピグマリオンは自邸へ駆け戻って彫像を抱きしめます。すると、心なしか温もりが感じられ、触れたところが柔らかく凹むような気がする。キスをすると、乙女は恥ずかしげに彼を見つめ返しましたその下方に立てかけられた仮面はなんとも不気味で、どうにもハッピーエンドとも行かなさそうです。この仮面は古代ギリシャ劇に使われていた悲劇用と喜劇用のマスクとされ、この出来事が悲劇でもあり喜劇でもあることを暗示していると考えられ、画家の冷めた視線を感じさせます。はじめに 今回はメトロポリタン美術館所蔵、葛飾北斎の『神奈川…画面右上に浮かんでいるのは恋の矢をつがえるキューピッド。ピグマリオンの彫像への恋着は、ヴィーナスの息子であるこのいたずらっ子によるものだったと暗示されています。世界の美術館の見どころとなる作品や画家について解説していくブログです。はじめに 今回はニューヨークメトロポリタン美術館所蔵mピエー…今回はメトロポリタン美術館所蔵、ジェロームの『ピグマリオンとガラテア』について解説していきます。トルコなど東方を舞台とする歴史画を多く描き、登場する女性ヌードの過剰なまでのエロティック度で知られています。海の泡から生まれたヴィーナス。貝の船に乗って彼女はキプロス島に到着し、人々は彼女を守り神として崇めます。しかし、彼女を女神として認めようとしない一部の女性達にヴィーナスは激怒。ヴィーナスは彼女らを売春婦にしてしまいます。ジャン・レオン・ジェローム(1824-1904)はフランス芸術アカデミーの大御所でしたが今は半ば忘れられた画家。美術館に行く前には予習として、行った後には復習に後に、特に行く予定はない人は気晴らしにご覧ください笑はじめに ワシントン・ナショナルギャラリー、Wikipedi…その乙女はガラテアと名付けられ、ヴィーナス立会いのもと結婚式を挙げ、翌年には子供も生まれました。ジェロームによる本作はまさに彫像が変身する瞬間を捉えたもの。柔らかく撓り、熱い血潮を感じさせる上半身とまだ硬く冷たい象牙のままの脚部が好対照をなしています。世紀末芸術の一大ブームだったファムファタル、つまり「男を破滅させる美女」がここでも顔を覗かせています。美しい一瞬を描いているように見えて、「ピグマリオンの行く末は?」と心配になってしまいそうな作品です。はじめに 今回はエルミタージュ美術館所蔵、ジェロームの『仮面…はじめに 今回はウォルターズ美術館所蔵、ジェロームの『カエサ…やがて、ヴィーナス祭の日が来て、ピグマリオンも祭壇へ捧げものに行き、「象牙のような花嫁をください」と一心に祈ります。すると、望みが叶った証拠の炎が三度燃え上がる。さらに、注目すべきは神話と異なり、彼女の方からピグマリオンにキスをしている点。ピグマリオンは女に腑抜けにされた男そのものです。 カテゴリ「Jean-Léon Gérôme」にあるページ. ジャン・レオン・ジェロームによる絵画作品《アルメの踊り》の解説。本作品は1863年から1863年に制作され、デイトン美術館に所蔵されている。