外国人労働者を雇用する事業所は2018年10月時点で全国に約17万カ所あります。このうちの56.7%が従業員30人未満、外国人労働者全体のうち、34.0%を占めています。 要するに、外国人労働者を雇う企業の多くは、規模が小さい会社ということです。 1.1 対策は日本と外国人の文化の違いを知ること; 2 外国人観光客とのトラブル事例と対策【宿泊施設】. 外国人労働者と聞くと、真っ先に心配になるのがコミュニケーションをとるにはどのようにしたらよいのかという言葉の問題が頭に浮かぶのではないかと思います。 人手不足の業界も増えてきて、外国人労働者にその業務の一部を任せようとし・・・ 1 外国人観光客とのトラブル増加を、4割の施設が実感. 少子高齢化の影響もあり、人材市場は売り手有利の状況が続いている。正社員だけでなくアルバイトも同様の状況で、コンビニや飲食店では外国人労働者が働く姿を日常的に見かけるようになった。中堅中小企業においても、人材不足への対処やグローバル化による業績向上の目的から外国人雇用が必須となってきている。では、実際に外国人労働者を受け入れる際には何をすればいいのか。外国人はもちろん、日本人社員もイキイキと働ける職場環境のつくり方を説明する。労働力不足に悩むコンビニ業界でも外国人労働者採用は積極的に進められている。ある大手コンビニでは新卒採用の1割を外国人留学生枠として設定。留学生は日本に興味を持つ人が多いため、日本の文化を学べることから意欲を持って働けると好評で、従業員不足解消につながっているという。また別のコンビニでは、これまで各加盟店に任せてきた外国人従業員の研修を本部主導で行うように変更。従業員だけでなく加盟店オーナーも研修に参加することで、外国人育成のノウハウを効果的に身につけられるようになった。その他には、業務のポイントを文字を使わず写真とイラストでわかりやすく説明するように工夫したコンビニもある。最初に紹介するのは、福岡県に本拠を置く製造業者だ。同社では、自社にとって海外進出は必須であるという雰囲気を社長自ら積極的に発信し、グローバル化の意識をまず社内に浸透させることで、外国人労働者の受け入れ態勢を準備していった。そのうえで実際の外国人受け入れを開始。採用にあたっては外国人留学生と企業とのマッチングサイトや合同会社説明会、就活フェアなど様々なチャンスを活用し、社長が率先して採用を進めた。同時に、日本人社員に対しても外国人講師による英語教室を開催することで、外国人と日本人社員の相互理解を深める施策に注力した。その結果、外国人だけでなく日本人社員にも意欲向上が顕著に見られるようになったという。また、外国人社員が母国での独立を望む場合のサポートも積極的に行っており、独立後も現地パートナーとして良い関係を築いている。適正な労働条件を提示し、納得の上で働いてもらうことも重要なポイントだ。業務の練度などにもよるが、日本人社員と待遇を同一にすることで、外国人労働者に「この会社で働き続けたい」と思ってもらうため、やる気やモチベーションを上げる努力も求められるだろう。中堅中小企業が外国人労働者を雇うことを考えた場合、現状では「人手不足を補うため」という意味が大きいだろう。実際、多様な業種の中堅中小企業で外国人労働者が働いているが、受け入れ姿勢が整っていると胸を張って言える企業は決して多くない。人手不足は待ったなしの状況であり、早急な対策が求められる。では、総務人事部門としては、具体的に何をすべきなのだろうか。外国人労働者が不平や不満を感じず、快適に働ける労働環境を整備することはもちろんだが、自国と異なる環境で暮らすことに配慮し、生活面を充実させるための取り組みも必要だ。宿舎を会社が用意している場合は、外国人労働者が宿舎スタッフとの間で心地よい関係を築けるように配慮することを重視したい。さらには地域に溶け込んでもらうため、地元のイベントに積極参加してもらうなどの取り組みも有効といえる。仕事の進め方や価値観の共有を進めることも重要だ。日本と他国では、労働環境はもちろん、生活においても文化や価値観が異なるケースは多い。例えば日本では「言わないでもわかる」「空気を読む」「胸中を察する」といった風土がいまだに根強いが、外国人労働者に“暗黙の了解”の文化は基本的に通じないと考えるべきだ。そこで、指示はしっかりと言葉で伝え、理解の確認を徹底することが求められる。また、日本では当たり前の「時間を守る」「業務改善のために努力する」「目上の人を敬う」といった姿勢も当初は通じにくいことがあるので、会社が目指す価値観を共有する努力も必要だ。国籍別にみると、中国が約37万人で全体の約30%を占め、ベトナムの約19%、フィリピンの約12%と続く。外国人労働者というと現状ではコンビニやスーパーマーケット店員のイメージが強いかもしれないが、技能実習制度に基づく外国人技能実習生の受け入れも増えており、専門的な知識や高度なスキルを必要とする“高度人材”も製造業や建設業を中心に様々な業種で増加している。しかしまだまだ単純労働者が多いのも実情だ。このように、外国人労働者を現実に受け入れる際には様々な問題が考えられる。経営レベルで考えなければならない問題もあるが、言語、コミュニケーション、生活環境といった部分については総務人事が率先して対応すべきだろう。それでは、実際に外国人労働者とうまく協働し、イキイキと働ける環境構築に成果を上げている事例を紹介していこう。一方、ある大手電子機器メーカーでは、自社のダイバーシティを推進することで外国人労働者のモチベーション向上を実現。外国人が母国に帰る際に活用できるよう長期休暇取得を促進する施策を展開しているほか、宗教に配慮して祈祷部屋を設置したり、社員食堂で使用される食品素材を明示したりなど、多文化の共生環境を実現する取り組みも実施している。そのほか、外国人に日本語能力テスト受験料を補助することで円滑なコミュニケーションを推進する施策も行っている。外国人労働者受け入れに際して最も大きな問題は、やはり言語の壁だろう。コミュニケーションの面で、外国人側も、日本人社員側も不便を感じるケースはどうしても多い。労働者の出身国は多岐にわたっており、英語以外の言語を母語とする外国人も多いことから、受け入れる企業側で多様な言語に対応することにはどうしても限界がある。となれば、やはり労働者に日本語能力を身につけてもらうことが最優先になるだろう。外国人労働者の採用は、今後も必然的に進んでいく流れにある。総務人事部門としても、自社の事情に合わせて、外国人労働者がイキイキと働ける環境の構築に尽力してほしい。日本語を話せるなど深い能力まで求められるケースはそれほど多くない。まずは業務上の指示がしっかりと理解でき、日本人社員との間で最低限のコミュニケーションに困らないレベルの日本語能力を身につけてもらうことが肝要だ。そのために日本語教室に通わせるといった教育支援が必要になるが、自治体やNPOなどが主催する安価な教室を活用してコスト負担を減らすことも考えたい。言葉の面だけでなく、社内で日本人社員だけで集まらないようにするなど、コミュニケーションを促進する会社側・日本人社員側の姿勢も大切になる。日本で働く外国人労働者の数は、厚生労働省の発表によれば2016年に初めて100万人を突破、2017年10月には約128万人に達した。前年同期から18%増、5年連続の増加で、2007年に外国人雇用状況の届け出が義務化されて以降、過去最高を更新している。外国人労働者を受け入れるにあたっては、就労ビザ取得や保険といった法律上の問題ももちろんあるが、何より外国人労働者がイキイキと働ける環境をつくるために、企業として解決すべきことが多々ある。
目次.