異国情緒ある旅情とロマンス、ミステリーが楽しめます。前書きでの著者の自賛も納得の面白さです。そんなアガサ・クリスティー 『ナイルに死す』の感想です。 『ナイル殺人事件』(ナイルさつじんじけん、Death on the Nile)は、1978年のイギリスのミステリ映画。監督はジョン・ギラーミン、主演はピーター・ユスティノフ。 原作はアガサ・クリスティの『エルキュール・ポアロ』シリーズの一作『ナイルに死す』。. ナイルに死す 早川書房: 世界探偵小説全集 脇矢徹 315 1965年 ナイルに死す 新潮社: 新潮文庫: 西川清子 402 1977年 ナイルに死す 早川書房 Hayakawa novels 加島祥造: 429 1984年 ナイルに死す 早川書房 ハヤカワ・ミステリ文庫 加島祥造 464 ISBN 978-4-15-070076-8: 真鍋博
若く美貌の大富豪リネットは、友人であるジャッキーの婚約者サイモンを奪って結婚します。ハネムーンでエジプトを訪れた2人でしたが、行く先々にジャッキーが現れ執拗に嫌がらせをくり返します。休暇でカイロに来ていたポアロは偶然その様子を見かけ、同情してジャッキーに過去は葬り去らせなさいと忠告しますが、ジャッキーは聞き入れず銃を取り出して、これでリネットを殺してやりたいと言います。翌日ポアロがナイル河のクルーズ船に乗ると、列車に乗るふりをしてジャッキーの尾行をまい … 序文でアガサ・クリスティ自身が逃避文学だといわれてもナイルの日差しを楽しんでくださいと書いているのはそういう事情があったためでしょう。縁があった女性だからでしょう。ポワロはある意味霊的な存在としてジャクリーンにアドバイスしています。アガサ・クリスティ渾身の豪華ミステリです。いくつものドラマが複合的に展開します。悠久のナイルの流れは神秘的に登場人物たちに審判をくだします。1937年のエキゾチックなミステリです。ポワロ、レイス大佐のツインキャスト、ヴィジュアル度は時代を超越しています。1952年作品。ゴシック調の巨大な屋敷で展開する物語です。圧倒される舞台設定の中で奇妙な人々がそれぞれの思惑と理想の実現のため不穏な空気を気づかないふりをしつつ生活しています。旧友の頼みを引き受け、彼女の妹でもありマープル自身の旧友のためストニイゲイトに赴きます。ポワロがリネット・ドイルからジャクリーンが逃れるための依頼を断るシーンが印象的です。刮目して見よ! ウソです。見てください。元号が新たに「令和」と発表され、心機一転も目論まず、愚直に剛毅一直線の路...1928年出版。クリスティが38歳、自身が評価しなかったミステリとされています。カナリア諸島で書き上げられました。この年アガサ・クリスティは失踪事件の渦中の人となりました。セント・メアリ・ミードが出てくるいろんな意味で興味深いミステリです。ポワロは相変わらずです。古都エルサレムからペトラ遺跡、死海を舞台にしたミステリです。1988年「死海殺人事件」として映画化されました。ローレン・バコールが出演しています。原作は1938年に出版されました。臨場感あふれるミステリです。ポワロは時間の整合性に注視してアメリカ人家族を救済します。ミステリ戯曲としてあまりにも有名です。1952年以来のロングラン公演。出版は1954年です。雪で閉ざされた山荘が舞台。それだけですでにミステリっぽい上にアガサ・クリスティ作です。奥行のある構成で引き込まれてしまうでしょう。ただの物語ではありません。世相を現しています。1936年発表された三つのミステリの二番目のミステリになります。クリスティは30年に再婚して46歳、精力的に執筆していた時期になります。アッシリア遺跡発掘現場を舞台に情熱的な愛が引き起こす倒錯した非常に考えさせられるミステリです。暑さと寝苦しさが伝わってきますアガサ・クリスティは「問題は未来であって、過去はどうでもいいのである」と大事なことだから二回書いています。「春にして君を離れ」はミステリの女王アガサ・クリスティのメアリ・ウエストマコット名義の3作品目です。1944年に出版されたアガサ・クリスティの代表作のひとつです。心理サスペンスのワクを超えて高い評価を受けている作品です。ポワロの相方として登場します。ポワロに無駄な質問をしないとほめられます。今の結果は以前の行為によるものだともいいます。あなたは何でもできる立場なのだからもとに戻すこともできるのだともいいます。バートラム・ホテルにて AT BERTRAM’S HOTEL アガサ・クリスティ 乾 信一郎 訳1937年当時ナイルの情報ってどれだけのひとが知っていたでしょうか。1935年、引退したポワロが出会った事件です。謎のクィン氏で登場したクィン氏よりある意味謎のサタースウェイト氏が活躍する事件です。あいかわらず女性の秘密に詳しすぎです。ポワロが生い立ちを少し語ります。この段階ですでに老境です。しかしあと四十年頑張らないといけませんその後もストーカーとしてリネットとサイモンの新婚旅行をつけまわすジャクリーンに何度もアドバイスをします。私は以前映画を観たのですが「ナイル殺人事件」というタイトルのせいかさっぱり身についていませんでした。クリスティはジャクリーンというヒロインを哀しくも美しい女性として据えています。登場人物に左翼テロリスト、左翼主義が出てくるのは世情でしょう。イギリスの帝国主義がまだ及んでいたとはいえこんな豪華な客船で船旅は贅沢のきわみといえます。このナイル川の旅では人生の不条理をかかえた人物が幾人も乗船しています。ファシズムとともに左翼思想も世界に広まりぶつかるようになります。容姿と財産があるのに貧しい親友のたったひとりの恋人をうばったリネットにポワロはこのくだりをはなします。アガサ・クリスティの実際のナイル川遊覧体験が存分に生かされているからです。当時そんな余裕があるひとはまれでした。クリスティ短編集13です。1960年出版。6編。血ダクの「ポアロのクリスマス」(38年)から22年後の短編集です。クリスマスらしい雰囲気のクリスマスに読むにふさわしい短編集です。クリスティ自身がオススメしているくらいです。ぜひクリスマスにどうぞ。ミス・マープルものでも「バートラムホテルにて」とならび名前がでたり聖地めぐりをされる「パディントン発4時50分」。まだギリギリよき英国の時代です。クリスマスにはクリスティを。「パディントン発4時50分」1957年発表アガサ・クリスティ65歳のときの名作です。アガサ・クリスティは非常に安値で当時のひとびと(現在の私も)にナイル川の客船のチケットを用意してくれました。ある金持ちが客をもてなすのに自分の牛や羊が惜しくなり羊一匹しか持っていない貧乏人の羊をとりあげ客に供します。これはノーギャラです。ポワロはクールかつホットなキャラです。そして人情があります。依頼は断るのですがジャクリーンにはなしてみることは約束します。すさまじい損耗率にもかかわらず国際旅団はその名を歴史に刻みます。しかしブルネテの戦いで戦死。他にヘミングウェイ、マルロー、カミュ、キャパなど文化人が参戦しています。これはクリスティのこころのアドバイスかもしれません。人生にはどうにもならないことがあります。道を間違えてはいけません。ロンドンムカシオトナ女子ライフミステリです。ビートルズ旋風の1965年出版。老後のしあわせ指南書です。エドワード朝のたたずまいを残すバートラム・ホテルを足がかりにロンドンを駆け巡り買い物するミス・マープルの青春ミステリ。オトナ女子も食べ物もいっぱいでてきます。これを聞いて怒ったダビデ王に予言者ナタンは部下の女房に一目ぼれしてその部下を死地に送り込んで殺すアンタも同じだよと言い切るのです。これは預言者ナタンからダビデ王が「おまえが言うな!」と指摘されるくだりです。そのなかでもジャクリーンにはポワロがおもんぱかっているのがよくわかります。国際旅団は各言語ごとに部隊分けされエイブラハム・リンカーン大隊には日本人義勇兵ジャック・白井が参加していました。真の男とはだれか。真の女とはなにか。状況に左右されず自分の信じた道をいくふたりを救う名探偵エルキュール・ポワロ。クールを装いつつも男気をみせるポワロがサイコーです。静かなストーリーのなかに熱い情熱が流れています。アガサ・クリスティ1940年の逸品です。ここまで読者をかんたんにトランス状態にもっていく小説はそうありあません。伝説の外国人義勇兵部隊、国際旅団の先陣を切ったのがイギリス人部隊でした。ヨーロッパではナチスが台頭、スペインの古都ゲルニカが爆撃されます。1953年。戦後8年です。イギリスの「ゆりかごから墓場まで」の現実がひしひしと伝わってくるミステリです。税制が変わり戦前とは比べものにならない税金で生活が一変したひとびとの悲劇です。イギリス社会は過渡期です。適応しなくてはいけません。命の値段が下落しています。ポワロもミス・マープルも出ません。しかしオリヴァ夫人が登場します。ビートニク、テディ・ボーイ、エスプレッソ、家電製品など当時のモードをとらえつつも対比してるのが黒魔術的な呪いです。しかも使用される毒物が現代を予言するような非常に怖いハナシです。1960年作品。 【ホンシェルジュ】 小説投稿サイト「小説家になろう」で発表され書籍化、コミカライズもされている人気シリーズです。タイトルは最弱モンスターで有名な「スライム」ですが、本シリーズに出てくるのは「最強スライム」。チートなスライムの物語をぜひ覗いてみてください。
紳士なポアロおじさんが彼女を諭すシーンは印象的です。太陽と月の話や、カップルの会話を横に呟く言葉などです。そしてロマンスのためにしっかりと押さえるところは押さえていくポアロの姿を楽しむことができます。やはりポアロはこうでないとと思います。「あなたには感服しますよ。あなたは、“きみの考えてることを話してくれ”なんてことを言わない。もし私がいま話せるんだったら、すぐ話すだろうと、あなたはちゃんと知っています。しかし、そうする前に、片付けねばならぬことがたくさんあるのです。(中略)」というありさまです。読んでいて違和感を覚えてもそれが何かは分かりません。しかも、最初の殺人から物語の速度は徐々に加速していきます。事件は重なり、違和感ある発言に疑念は増えても、加速する速度に押されるようにして読み進めてしまう面白さがあります。読ませる面白さです。トリックや犯行理由、誰が、どうして、よりも旅情と人間模様に面白さの重点を置いているように思いました。その面白さとその中にある伏線もあって、再読しても面白いです。そして、分かっているミセス・アラートンとのやりとりが読後感を良くしています。さらにそこに多数の伏線を用意しています。一見、退屈なところも無いわけではありませんが、後になってその伏線が次々と明らかになるため、再読するとまた楽しめます。小事に目をつむり、幸福な解決策を用意するポアロの姿がここにあります。前書きで著者が「自分では、この作品は“外国旅行物”の中で最もいい作品の一つと考えています」と書くのも分かります。前書きで著者が「いま読み返しても、自分がふたたびあの遊覧船に乗ってアスワンからワディ・ハルファまで旅しているような気持ちなります。」と書くだけあって、ナイルの風景や様々な人たちとのふれあいは紀行文に近い楽しみが出来ます。そこに様々な人間模様があります。さりげない一言や人間関係、透けて見えるようで見えない悩みなど、最初の殺人とは直接関係が無いようでも、後ほど他の事件に絡むこともあるためいい案配になっています。この片付けねばならない問題は八つほどあります。それが事件の何に関わるのか分かればポアロと同じ位置に立っていることになります。それらの一部に違和感を覚えても、全てというは丁寧に読んでいても難しいのではないかと思います。リネット・ドイルのような人の周囲には、いろんなものがあるんです。いろんな矛盾した憎悪、嫉妬、羨望、意地悪。まるで蠅の群れみたいにブンブン――ブンブン――